2010/06/14

ラスト・コーション


ラスト・コーション
2007年 (中国/アメリカ)
監督:アン・リー
出演:トニー・レオン、タン・ウェイ他
日本軍占領下の上海、そして香港を舞台にチャン・アイリンの自伝的短編を『ブロークバック・マウンテン』のアン・リー監督が映画化したサスペンス・ドラマ。1万人のオーディションで選ばれた、女スパイを演じるタン・ウェイは大胆な性描写にも体当たりで臨み、演じ切る。トニー・レオンの完ぺきな中国語にも注目。総製作費40億円をかけた映像美も見逃せない。(Yahoo!映画より)
主演二人が素晴らしい。
占領下の中国で日本軍に近づき地位と富を得るイー(トニー・レオン)
かたや比較的裕福な家庭に生まれ、特に反体制運動にも興味のなさそうなワン(ワン・ウェイ)。しかし彼女も香港の大学で出会った演劇部のリーダーに惹かれ、彼の主導する反日運動に参加、やがてイー暗殺計画を企てた際に「主演女優」として、イーを誘惑することになる―。
正体を隠して接近してきたワンに惹かれたイーは、奥さんのスキを見て豪奢なレストランにワンを招待する。裕福な成功者と若い女の初対面としてはありがちな設定ではあるが、この映画ではよくあるパターンのように絢爛豪華なレストランのシャンデリアが大写しにされることも、美形のウエイターがかしづいて勧める高価なワインを事も無げにオーダーすることもない。
男性の成功者としての側面を強調するためにレストランが使われることはなく、大半の時間は二人の顔のアップで流れてゆく。
この場面のふたりが抜群に色っぽい。
決して近づきすぎず、かといって離れすぎず、距離を取りながら視線をぶつける。
言葉は探るように、柔らかく首筋を触るように、すこしづつ心に絡んでいく。
ゆらゆらとしながらお互いの存在を心に落とし込んでゆくく二人は妖艶で、実は既に深いところで愛しあっているのではないか、とすら思える。
特に目的を持ってイーに接近したはずのワンの危うさは、物語にある種の予感と背徳とを与え、もはや二人から目を離すことが出来なくなる。
また、やがて来るべきときが来た時のトニー・レオンの演技が素晴らしい。
表情、間の取り方、その後のアクション。
ほんのワンシーンで、イーが現在まで生きてきた人間であることの全てを表現する。
物語としての欠陥はワンが身を挺してまで抗日運動に参加する理由にイマイチ説得力がないことだが、それすらも、「だからこそ」彼女は運動に生きる意味と大義を求め、そんなものを求める彼女「だからこそ」物語を鮮烈なものとすることが出来たのではないかと思う。
見終わってから思うには、どこか稚拙なタン・ウェイの演技すらも、彼女が「演じているように見えること」が重要な演出であり、それが「演技ではないか」と思うからこそ、最後まで目が離せなかったのだということに気付かされた。
満足度 91点
キャスティングの力を見せつけてくれました(´∀`*)

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