2006/05/31

【Flick】娼婦たち


娼婦たち
(2003、スペイン)
監督:ルナ
出演:ダリル・ハンナ
    デニース・リチャーズ
    ヨアキム・デ・アルメイダ
    マリア・ヒメネス



 世界最古の職業といわれる“娼婦”にスポットを当て、その実像を実際の娼婦たちへのインタビューやプライベート映像、ドラマなど多彩な構成で描き出していく異色作。監督は「ヴィンセント・ギャロ/ストランデッド」のルナ。ドラマ部分にはダリル・ハンナ、デニース・リチャーズらが出演。(allcinemaより)

スタッフロールが終わると、ふいっ、と一息つきたくなった。
チェブラーシカでも観て自分の居場所を確認したくなった。帰りたくなった。忘れたくなった。
何かを抉ったままにしてあるような印象はダンサーインザダークに似ている。
キタね。コレ。


苦学生レベッカが処女のまま娼婦としての仕事を始めるまでのショートストーリーと、各国の娼婦たちとジゴロ、それを買う男達へのインタビューが織り成されて構成されている。娼婦には日本人もいる。
彼・彼女達の語る言葉は時に前衛的で、時に保守的で、それぞれの立場を考えると胸に迫るものがある。

映画は、特にドキュメンタリーは誰かの真実を切り取り、それに色を付けて作品にしていくのを基本としているのだが、その演出の過程で素材が損なわれてしまうことがままある。それは製作者側の様々な(例えば商業的な。例えば思想的な。)事情や思惑によるのだろうが、この作品はインタビューの編集という形式を取ることにより、製作サイドの意図が入り込む余地をかなり狭めている。スクリーンの中にいるのは確かに「人間」だ。

学費に苦しむレベッカの葛藤を見るまでもなく、進んでこういった仕事に就く人間はいないだろう。もちろん抵抗の無い人もいるだろうし、生活の為に身を売る人間と有名になりたくてポルノに進む人間はまた違う筈だ。
その違いとは人が人生に求めるものの違い。つまりは生きる意味。彼女達の強さとはそれをしっかりと認識していることに起因するのだろう。そしてその強さが生まれた理由を考えるとき、スクリーンの前で俺はとても辛くなるのだ。きっと彼女達は"選ばせれた"のだ、という考えが消せないから。そしてその選択肢を提示するのはいつだって、空調の効いた部屋で哀れな人たちの物語を楽しむ側の人間なのだろうから。俺はいつだって偽善者なのだ。そしてスクリーンの中の彼女達はそれを許すのだ。

彼女は許す。多分それが必要だから。

ならば俺は一体何を許せばいいのだろうか?


・・・まあ、ゆっくり考えよう(;^^


総評 96点  女達。男達。

2006/05/26

【Flick】サーティーン あの頃欲しかった愛のこと


サーティーン あの頃欲しかった愛のこと
(2003、アメリカ/イギリス)
監督:キャサリン・ハードウィック 
出演:ホリー・ハンター 
    エヴァン・レイチェル・ウッド 
    ニッキー・リード 






不安定で傷つきやすい思春期の少女の心のうちと、そんな少女を娘に持つ母親の戸惑いと苦悩を赤裸々に描く母娘ドラマ。無邪気で可愛かった娘が、大人びた友人の出現で急激に非行の世界へと落ちていく。母親はなんとかして娘を更生させようと必死に手を尽くすが…。主演は「ピアノ・レッスン」のホリー・ハンターと「ウィズ・ユー」のエヴァン・レイチェル・ウッド。本作で女優デビューも果たしたニッキー・リードが自らの体験を基に手掛けた脚本を、これまで多くの映画で美術監督を務め、これが監督デビューとなるキャサリン・ハードウィックが映画化。 素直で真面目な13歳の少女トレイシー。両親の離婚後、母メラニーや兄と暮らしていた彼女は、学校の人気者でクールな少女イーヴィと友だちになる。彼女の影響で、トレイシーは派手なメイクやボディピアスなどそれまでは考えもしなかった過激なファッションをし、母親にも悪態をつくようになる。そんな娘の変貌ぶりに戸惑いを隠せないメラニー。恋人や元夫はまるで相談に乗ってくれず、彼女は一人苦悩を深くする。トレイシーの非行は留まるところを知らず、やがて酒を覚え、いつしかセックスやドラッグといった危険な快楽の世界に溺れていく…。






近所のビデオ屋でランキング上位に入っていたので借りてきてみた。面白かったです。
劇中のイーヴィ役は当時14歳で、13歳の時にこの作品の脚本を書いたそうで(共同脚本)、いやーさすがと言うか、リアルです。とてもリアルです。
自分自身が少女どころかおっさんなので共感出来るということこそ無かったものの、充分に理解出来ます。悩める少年だった時代を久々に肌で思い出しました。夜に憧れていたあの頃。

パッケージに「13歳で脚本、14歳で出演、15歳でなんたら(忘れた)」と書かれていたのをチラ見していたので、主人公のトレイシー役が14歳のかと思っていたらイーヴィの方だったのね。
正直、イーヴィの演技はイマイチだな、と思っていましたが、14歳のデビュー作と思えば上々でしょう。
トレイシーの母は「ピアノレッスン」のあの人だそうで、そうとは気が付かなかったけどさすがにいい演技で見ごたえ充分でした。

それぞれの家庭環境、その中での培われた嗜好・世界観、一人一人の立場に説得力があります。
きっと、この作品は描きたかったことを描ききれていると思います。
女流作家の処女作のような、力強い良作です。


総評 90点  ドラッグはダメですよ(・∀・)

2006/05/24

【Flick】エレファント


エレファント
(2003、アメリカ)
監督:ガス・ヴァン・サント
出演:ジョン・ロビンソン
    アレックス・フロスト
    エリック・デューレン
    イライアス・マッコネル






1999年に起きた米コロラド州コロンバイン高校の銃乱射事件をモチーフに、「グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち」のガス・ヴァン・サント監督が、事件が勃発するまでの高校生たちの一日を淡々と描いた青春ドラマ。なお、本作は2003年カンヌ国際映画祭でパルム・ドールと監督賞のW受賞という史上初の快挙を果たした。 オレゴン州ポートランド郊外のワット高校。ある初秋の朝、生徒たちそれぞれの、いつもの一日が始まる。ジョンは、酒に酔った父と車の運転を交代して学校に到着。だが、遅刻した彼は校長から居残りを言い渡される。写真好きのイーライはポートレート制作の真っ最中。女子に人気のアメフト部員ネイサンはガールフレンドと待ち合わせ、食堂では仲良しの女子3人組がダイエットや買い物などの話で持ちきり。そんな中、いじめられっ子で内向的なアレックスとエリックは、ネットで入手した銃器を手に学校へ向かっていた…。






全然面白くなかった。
ただ自分の映像センスを見せたかっただけで、ショッキングな事件や若者の群像なんかは単なる客寄せか、そこまで言わなくても味付け程度にしか過ぎないんじゃないかな?
何も説明しない。何も訴えない。淡々と描いているんじゃなくて口空けて見ているだけだろ。
きっとこの脚本家か監督はこの事件のことを知らない映画かカメラおたくのおっさんに違いない。
グットウィルハンティングの監督とか言ってるが多分ウソだ。

そうそう、役名と役者名を揃えているのは面白かったです。スタッフロール見て、一瞬理解出来ませんでした。 実際の犯人名は知らないけど、そこまでやるのだからきっと同じなのでしょう。
そうじゃなかったら益々不愉快になるので調べませんけど。


総評  8点  つチラシの裏

【Flick】コールドマウンテン


コールドマウンテン
(2003、アメリカ)
監督:アンソニー・ミンゲラ  
出演:ジュード・ロウ
ニコール・キッドマン
レニー・ゼルウィガー 








南北戦争を背景に、一途な愛を貫く男女を壮大なスケールで描いたラブ・ストーリー。全米図書賞を受賞したチャールズ・フレイジャーの同名ベストセラー小説を「イングリッシュ・ペイシェント」のアンソニー・ミンゲラ監督で映画化。主演は「A.I.」のジュード・ロウと「めぐりあう時間たち」のニコール・キッドマン。また、共演のレニー・ゼルウィガーはアカデミー助演女優賞を獲得。 南北戦争末期の1864年。ヴァージニア州の戦場で戦っていた南軍の兵士インマンは、瀕死の重傷を負い、病院へ収容された。従軍して3年になるインマンにとって、故郷コールドマウンテンと、彼の帰りを待ち続ける恋人エイダだけが心の支えだった。そして、病院でエイダからの手紙を受け取ったインマンは、ついに死罪を覚悟で脱走を図り故郷へ向かって歩み出す。一方その頃、インマンの帰りをひたすら待ち続けていたエイダは愛する父の急死という悲劇に見舞われていた。一人では何も出来ない彼女は途方に暮れるばかりだった。しかし、やがて彼女は流れ者の女ルビーに助けられ、2人は次第に友情を育んでいった…。







小学校の頃はクラス替えがある度に好きな子が変わったりしていた。
どういう心理なのかもはや解析不能だが、要するに「好き」の垣根が低かったんだとは思う。
消しゴム貸してくれた=好き(*^∀^*)、教科書見せてくれた=好き(*^∀^*)、喧嘩で味方になってくれた=好き(*^∀^*)ってな感じで、「~してくれた」=好き(*^∀^*)の図式が成り立っていた。
これは遺伝子を抱える生物として当然でもあるだろうし大人になっても変わらない部分でもあるが、経験を積むことによって理性が発達し、様々な深読みや先読みが出来るようになり、好き(*^∀^*)だけど愛してない(;Д;)。とかそういう現象が生まれてくるようになる。

(ネタバレ)
この物語を要約するなら、束の間の約束を心の支えに戦乱を生きた二人の愛の物語、といったところだが、その束の間の約束を信じるに足るものにしようと決めさせたものは何だったろうか。
映画で描かれている二人の接触は畑仕事やお茶の差し入れ程度で、出征直前のキスは精神の高揚に煽られての行動であるように見える。つまり消しゴムを貸してくれた同級生を好きになることと本質的になんら変わらないのだ。

ポイントは、二人が「それを思い出に縋ることと知りながら」お互いを求め合うところにあるのだろう。これは作中にお互いが相手のことを「何も知らない」、度々嘆くことからが裏打ちとなろう。
しかしそうであれば、インマンの死後、エイダは再婚すべきだったのではないだろうか。二人が過去に縋ったのは未来を信じるためではなかったか。そしてそれは二人の暗黙の合意では無かったのか。

娘インマンは明るい未来を示唆するために登場したのかもしれないが、彼女の登場や紹介も含めて最後のランチのシークエンスは蛇足であったように思う。特に説明的な描写が多すぎて、まるで言い訳みたいに聞こえるのだ。これではインマンは犬死だった、と言っては言いすぎだろうか。


70点  恋愛モノとしては未成熟な感じがします(´・ω・`)

2006/05/19

【Flick】SAW 2


SAW 2
(2005、アメリカ)

監督:ダーレン・リン・バウズマン
出演:ドニー・ウォールバーグ
ショウニー・スミス 
トビン・ベル 





低予算にもかかわらず、斬新なアイデアと巧みなストーリー展開が評判を呼び、世界的に大ヒットしたサスペンス・スリラーの続編。ある共通点をもとに出口のない家に監禁された者たちが、凶悪犯“ジグソウ”の仕掛けた凄惨な“ゲーム”の数々に翻弄され、逃げ場のない死の恐怖を体感していく。前作で監督・脚本を担当したジェームズ・ワンとリー・ワネルのコンビは製作総指揮に回り、新たに新鋭ダーレン・リン・バウズマンがメガフォンをとる。 元々は荒くれ刑事で今は内勤に甘んじているエリック。彼はある時、猟奇的連続殺人犯ジグソウを執拗に追う女刑事ケリーに呼び出され、凄惨極まりない殺人現場に立ち会う。その残忍な手口から、これもジグソウの仕業に違いないと思われた。しかも死体はエリックが使っていた情報屋、マイケルだった。犯人が現場に残したヒントから、エリックはアジトを推測、SWAT、ケリーとともに急行する。案の定、そこにいたジグソウは、思いがけずあっけなく捕まった。だが、それはジグソウが仕掛けた新たなゲームの始まりに過ぎなかった。その部屋に設置されたモニターには、どこかの部屋に監禁された男女8人が写っており、その中にはエリックの息子ダニエルも閉じこめられていたのだった…。(allcinemaより)




SAWの続編。続編はオリジナルを超えられないのが世の常だが、これもやっぱりそうでしたね。とはいえ”CUBE”や”かまいたちの夜”(注:ゲーム)のように「2は無かったことにしよう」と思うほどではなかったです。
やはり観る方にも慣れがあるので多少おぞましいシーンを見せられても冷静でいられるし(人間としてそれでいいのかという疑問はある)、どうしても伏線探しや裏を読むことに傾倒してしまう。その中で、想像を超えることはなくとも期待を裏切ることもなかったので、ヒット作の続編としては及第点でしょう。
登場人物が、いかにも、という風体の人が多かったのも良かったと思います。

結局明かされない謎があったのが個人的には嬉しいところです。映画が終わっても楽しめます。


(ネタバレ)
他に個人的に嬉しかったのは、途中で閉じ込められた人達になりきり身の振る舞いを考えていたときに「この手の知的愉快犯なら最初の部屋に出口がある可能性は高い」と考えていたら(出口じゃないけど)、まんまと扉があったときでした。思わず「yes!」と声に出して言ってしまいました。(;^-^)
謎解きといえば「頭脳の後ろに後ろに鍵が」が、すぐに分からない登場人物達はどうかと思いますね・・。


今作では上手くやれば最低4人は助かっていたことになりますが(注射器の鍵を素早く見つけて一人〈金庫の中にあるのが条件〉、皆で首の後ろを見せ合って一人、焼却炉の中に入って紐を引かずに注射で二人)、残りの人はどうするつもりだったんだろう?アマンダ、ダニエルはどうせ助かるから解毒剤は不要としても、他の人の手前注射もしないでピンピンしているわけにもいかないはずです。下から手を突っ込む箱の中の注射器を何とかしてもまだ足りない。 やっぱり他にもゲームがあったんだろうなぁ。見たかった・・!

それと例の首の後ろの数字の順番、「虹の彼方に」ってなんだろ?虹=rainbow、アマンダ=amanda?の頭文字aでアマンダの数字が2番目、って感じなのかと思ったらジャニスだがジョニスだかって奴がいたので台無し。英語が分かんないから言葉の暗号は解けそうもないなぁ・・。残念。

それと最後の疑問。多分最後の部屋にゴードン先生が居なかったと思うんだが、アレは何故だ!?続編への布石か!?
そういえばジグゾウも何だかバッチリ治療を受けている様子だったし、冒頭の頭ぺっしゃんこゲームも鍵を目の後ろに仕込むなんて素人に出来るとは思えない。こ、これはッ・・!!


ま、とりあえず寝よ。おやすみ。


総評 79点  女性もかわイイ!(・∀・)

2006/05/17

【Flick】君に読む物語


君に読む物語
(2004、アメリカ)

監督:ニック・カサヴェテス
出演:ライアン・ゴズリング
    レイチェル・マクアダムス
   ジーナ・ローランズ
    ジェームズ・ガーナー
    ジョーン・アレン
   ジェームズ・マースデン







「メッセージ・イン・ア・ボトル」の著者ニコラス・スパークスの長編デビュー小説を映画化したラブ・ストーリー。運命的な恋に落ちながらその関係を引き裂かれてしまった一組の男女の、時を経た永遠の愛をロマンティックに描く。監督は「ジョンQ-最後の決断-」「シーズ・ソー・ラヴリー」のニック・カサヴェテス。
 とある療養施設に独り暮らす初老の女性。彼女は若かりし情熱の日々の想い出を全て失っていた。そんな彼女のもとへデュークと名乗る初老の男が定期的に通い、ある物語を読み聞かせている。それは古き良き時代、アメリカ南部の夏の恋物語だった――。1940年、ノース・カロライナ州シーブルック。裕福な家族とひと夏を過ごしにやって来た少女アリーは、そこで地元の青年ノアと出会う。その時、青年のほうは彼女こそ運命の人と直感、一方のアリーもまたノアに強く惹かれていくのだった。こうして、2人の恋は次第に熱く燃え上がっていくのだが…。(allcinemaより)









ひと夏の恋を一生涯貫いた男女の、王道純愛モノ。

富豪の娘に一目惚れした貧しい男、時に強引な彼に引かれていく女。季節の終わりに訪れる別れ。再会。二度と離れないと愛を誓い合う二人。 ここまでベタなストーリーに郷愁を誘う時代設定では、どんな作品に仕上がっているかは見なくても大体分かる。 多少ひねりを入れた構成にはなっているが、それでもすぐ全容は読める。しかし、これはサスペンスでは無いので何の問題も無い。これはタイトルからして直球勝負の恋愛モノなのだ。
しかし直球勝負するにはちょいと力不足な感は否めない。分かっていても引き込まれるような、迫力というか、血の通った感じが欠けているように思う。若き日の葛藤、老いてしまった現在、それぞれを美化しすぎているような気がする。
愛を美しく描いているのに不足を感じるのは、俺の浅薄さ故、なのかもしれないが。


総評 64点  何故か僕にはイマイチでした・・(´・ω・`)

2006/05/08

【Flick】ミリオンダラー・ベイビー


ミリオンダラー・ベイビー
(2004、アメリカ)
監督:クリント・イーストウッド
出演:クリント・イーストウッド
    ヒラリー・スワンク
    モーガン・フリーマン



 「許されざる者」「ミスティック・リバー」のクリント・イーストウッドが監督・主演を務めた衝撃のヒューマン・ドラマ。厳しいボクシングの世界を題材に、そこに生きる名もなき男女の悲愴な人生模様を綴る。アカデミー賞で作品賞をはじめ主演女優、助演男優、監督賞の計4部門を受賞。共演は、ともに本作でオスカーを獲得した「ボーイズ・ドント・クライ」のヒラリー・スワンクと「ショーシャンクの空に」のモーガン・フリーマン。 ロサンジェルスのダウンタウンにある小さなボクシング・ジムを営む老トレーナー、フランキー。その指導力に疑いのない彼だったが、選手を大切に育てるあまり、成功を急ぐ優秀なボクサーは彼のもとを去ってしまう。そんなある日、31歳になる女性マギーがジムの門を叩き、フランキーに弟子入りを志願する。13歳の時からウェイトレスで生計を立てるなど不遇の人生を送ってきた彼女は、唯一誇れるボクシングの才能に最後の望みを託したのだった。ところが、そんなマギーの必死な思いにも、頑固なフランキーは、“女性ボクサーは取らない”のひと言ですげなく追い返してしまう。それでも諦めずジムに通い、ひとり黙々と練習を続けるマギー。フランキーの唯一の親友スクラップはそんなマギーの素質と根性を見抜き、目をかける。やがてマギーの執念が勝ち、フランキーはついにトレーナーを引き受けるのだが…。 (allcinemaより)




名伯楽の経営するボクシングジムに訪れた一人の貧しい女。 その素直さとしぶとさがドラマを紡いでいくのだが、ロッキーのようなサクセスストーリーでは無い。
今作のフランキー、スクラップもそうだが、イーストウッドの描く人物はどこか影があり暗い過去を思わせる者が多い。 これはミスティック・リバーのときにも感じたことだが、イーストウッドという人は、どこかで人を、もしくは人生を信じていないのではないだろうか?
最近、日本の若者の中には自傷を繰り返す人が増えているという。彼らの言葉によると、自分を傷つけることで「落ち着く」のだそうだ。生きた心地というものが痛みや恐怖でしか確認できないのだろう。 個人的見解だが、これは完全にバランスを失した状態であり、世界を自己中心に矮小化してしまっているのではないかと思う。イーストウッドの描く世界にも同じ種類の視野狭窄を感じる、と言ったらあまりにおこがましいだろうか。

僕は物語にハッピーエンドよりもメッセージを求めるし、ファンタジーよりもリアリティを好む。(気分にもよるけど) そしてこの映画はそういった部類の作品として優秀なのは疑うべくもない。イーストウッド、モーガン・フリーマン、ヒラリー・スワンクの演技もそれぞれ素晴らしく、特にヒラリースワンクの体のキレは凄いの一言だ。こないだの亀田兄弟の対戦相手よりは強そうに見えた。 しかし、それでもなお観終えた後には満足感以外の感情が残った。伝えようとしている世界観がどうもしっくりこないのだ。

映画は映画らしく素晴らしい。しかし、しっくりこないということはきっと僕とイーストウッドは合わない、ということなのかもしれない。


総評 74点  役者は揃ってます。イマイチに感じるのは俺のせいでしょう。
( ゚∀゚)=◯)`Д゚)・; ←俺