2006/04/20

【Flick】ヒトラー ~最期の12日間~


ヒトラー ~最期の12日間~
(2005、ドイツ/イタリア)
監督:オリヴァー・ヒルシュビーゲル
原作:ヨアヒム・フェスト 『ヒトラー 最期の12日間』(岩波書店刊)
    トラウドゥル・ユンゲ 『私はヒトラーの秘書だった』(草思社刊)
出演:ブルーノ・ガンツ 
アレクサンドラ・マリア・ラーラ
ユリアーネ・ケーラー 






ヒトラーが地下の要塞で過ごした最期の12日間に焦点を当て、彼の個人秘書を務めたトラウドゥル・ユンゲの目を通して歴史的独裁者の知られざる側面を浮き彫りにしていく衝撃の実録ドラマ。監督は「es[エス]」のオリヴァー・ヒルシュビーゲル。主演は「ベルリン・天使の詩」「永遠と一日」のブルーノ・ガンツ。歴史家ヨアヒム・フェストの同名ノンフィクションとヒトラーの個人秘書ユンゲの回顧録を原作に、戦後最大のタブーに真正面から挑んだ問題作。 1942年、トラウドゥル・ユンゲは数人の候補の中からヒトラー総統の個人秘書に抜擢された。1945年4月20日、ベルリン。第二次大戦は佳境を迎え、ドイツ軍は連合軍に追い詰められつつあった。ヒトラーは身内や側近と共に首相官邸の地下要塞へ潜り、ユンゲもあとに続く。そこで彼女は、冷静さを失い狂人化していくヒトラーを目の当たりにするのだった。ベルリン市内も混乱を極め、民兵は武器も持たずに立ち向かい、戦争に参加しない市民は親衛隊に射殺されていく。そして側近たちも次々と逃亡する中、ヒトラーは敗北を認めず最終決戦を決意するが…。






陥落直前のベルリン、そしてヒトラーとその周辺の人々を描いたドラマ。
元秘書の回顧録をベースにしているらしいが、史実の再現や人物描写に細心の注意を払っているのが伝わってくる。その気遣いは痛々しいほどで、役者が、脚本家が、贖罪と表現の狭間で見えない鎖に縛られているようだ。
そして逆にそれが「現代においてドイツ人がナチスを語っているリアリティ」となっているが、この語り手の抑圧された息苦しさが、崩落寸前のナチス帝国の哀愁を生きたものにしているように思う。これが計算ならちょっとスゴイですね。


混乱と混迷の中で人々はそれぞれの立場で様々な選択をし、ダイナミックに動いていく。大きな時代のうねりの中で生き抜こうと、あるいは生き切ろうとする人々を正面から捉えつつ、その是非については極力触れずに観客に委ねようとする姿勢には潔く、非常に好感が持てる。


芸術性を意識した結果だろう、全体にやや綺麗過ぎる嫌いもあるが、その平面的な美しさが時代に抗うことの出来ない人間の無力さの暗喩のようで、味わい深さを醸し出している。

もしも歴史が違っていたら、ヒトラーは現代においてどのような評価を与えられているだろうか。
その時代に、その舞台に自分がいたならどういう行動を取っただろうか。取り得ただろうか。
スタッフロールを眺めているときに様々な思いが去来する、満足感のある映画でした。



総評 75点  (´ⅴ`)/ 人間、ヒトラー。敗戦国の首相。

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